大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(う)1911号 判決

被告人 金森次忠

〔抄 録〕

弁護人谷田部正の控訴理由は、末尾添付の同人作成の控訴趣意書記載のとおりである。

しかしながら、本件記録及び当審における事実取調の結果に徴すれば、被告人は、原審相被告人福住祐介及び同天野忠次と共謀の上、原判示のごとき手段方法によつて、サンキストレモン五〇〇箱を、これに対する関税を逋脱して輸入しようと企て、その目的を遂げなかつたものであつて、右レモンは、被告人から米国ロスアンゼルス所在のモダーン・インポート・カンパニーの日本代理店の経営者ヘンリー・シモジマを通じて右インポート・カンパニーに売買の注文がなされ、同カンパニーと同系のモダーン・フードプロダクト・カンパニーが荷送人として米国ロスアンゼルス港において大阪商船株式会社所属ハワイ丸に積載の上、昭和三〇年三月一九日横浜港まで輸送されたものであること、右シモジマは右貨物についてのB・L(船荷証券)及びインボイス(送状)を被告人の懇請により数週後に間違いなくこれが代金をシモジマに支払うことの約束の下に被告人に交付したこと、被告人は右船荷証券を右商船会社に渡して、これと引換に同会社よりデリバリー・オーダー(荷渡指図書)を受け取つたものであり、一方右貨物については、当初原審相被告人両名の勤務先である東京商運株式会社が荷受人となつていたため、右荷渡指図書により同会社の手によつて被告人のために陸揚げせられて横浜市場冷蔵株式会社保税上屋倉庫に入れられてあつたところ、本件犯行の発覚によつて横浜税関より差押を受けるに至つたものであることがいずれも明白である。

しからば、右貨物が税関より差押を受けた当時においては、同貨物は全く売主の手を離れて、被告人において通産省からライセンス(輸入許可書)を入手し、かつ関税を支払いさえすれば、何時でも税関からこれを引き取り自由に処分し得る状態に在つたものであるから、たとえ未だシモジマに対してこれが代金を支払つていないとしても、右貨物の所有権が被告人に帰属していたことはいうをまたないところである。よしや右物件が所論のごとく外国貿易(輸出入)としての売買契約の目的物であるとしても、船荷証券の物権的効力については米国法においてもこれを認めているところであり、また法例第一〇条第二項の趣旨に照らしても、本件において右差押物件が当時被告人の所有に帰属していたことは疑う余地なきものであつて、この点につき原審の事実認定に誤なきものである。しからば、原判決が右物件すなわち本件犯罪に係る貨物の換価代金である横浜地方検察庁保管の現金二、〇〇一、五〇〇円につき関税法第一一八条第一項を適用してこれを没収したのはまことに正当であつて、所論のごとく同条同項但書を適用すべき限りではない。であるから、控訴趣意第一点の所論は排斥せらるべく、該論旨は理由なきものである。つぎに同趣意第二点の所論にかんがみ、原判決の科刑を検討するも、本件が米軍機関の軍納物資の直輸入を装つて、免除輸入申告書及びその発註書の偽造を伴う悪質の犯罪であること、その貨物の数量、逋脱しようとした関税額など諸般の情状を考え合せると、原判決の量刑はけつして重きに過ぎるものではなく、所論のごとき各事情を十分しんしやくの上とくに懲役刑の執行を猶予したものとみられるが故に、所論は採用するに由なく、該論旨は理由なきものである。

(尾後貫 堀真 入山)

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